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モノ語り #1 漂流教室

電車の中で某ゲーム情報ラジオを聴いてたら【漂流教室】の話題が上がったので漂流教室を買ってみました。

漂流教室と言われると自分のイメージは昭和漫画ならではの劇画っぽいタッチのホラーだけどギャグっぽいやつなので軽い気持ちで読んでみたのですが、全編通して考えると確かに違和感のある描写はあるもののかなりリアルなサイコホラーの名作でした。

物語の冒頭で母親と喧嘩をしたまま家を飛び出した主人公、高松翔(たかまつしょう)は通っている小学校で大地震に遭遇した学校ごと文明が滅び、砂漠化した地球にタイムスリップしてしまう。

文庫版漂流教室1巻291ページ

1.学校ぐるみの十五少年漂流記

漂流教室は十五少年漂流記を学校ぐるみでやるというテーマで作られたものと言われており、この作品自体は児童向けにも発行されており自分でさえ読んだことがあるぐらいなので聞いたことがある人も多いと思います。

十五少年漂流記は十五人の子供が無人島から脱出しようとする話なのに400人を超える小学生が力を合わせて文明が滅びた未来の世界から帰る方法を探そうとするのですから状況は十五少年漂流記の時よりはるかに深刻。

しかし恐ろしいのはその大所帯をまとめないといけない教師(大人)達が最初に正気を失い全滅してしまったこと。これ以上最悪のスタートはないと思わせておきながら雪崩れ込むようにして訪れるさらに最悪の事態を、子供達が知恵を出し合い乗り越えていく生命力の高さが見どころです。

2.子供の国は世界史をなぞる

この作品の見所の大部分を占めるといっても過言では無い学校内で起きた子供同士の争い。これが漫画の中の出来事とはいえ現在でも実際に起きえない問題が引き起こされているところからいろんなことを考えさせられました。

大人という絶対的なリーダーを無くし、主人公の高松翔(たかまつしょう)が新たなリーダーとなり学校をまとめあげるために大臣を選抜し役割を与えて動き出すも、その方針を無視して行動し死んでいく子供達がいたり。状況が改善しない責任を問い詰められたり。これはコロナの中にある世界中の今を表している様な気もします。

誰かが言い出した嘘を信じた子供達が一人の子供を祭り上げて生贄に捧げようとする集団心理が発生したり。それによる宗教の誕生や反乱軍の登場。挙句、リーダーに反旗を翻す子供が結集して別の国を作り出し殺し合いを始めたり。

漂流教室3巻270ページより

しかし読み終わった後冷静に考えてみると冷静に見てみると漫画の中のフィクションではなく、その事件ほとんどはかつて世界史の中で起きたかつての過ちを子供達が繰り返してしまった結果の様に思えました。

禍を神の怒りと信じ生贄を捧げるのも、思想の違う国の分裂や戦争も実際に起きてきたことです。

世界史を知らない子供達が奇しくも過去の過ちを引き起こし、乗り越えていく中でいつしか忘れてしまった動植物の命の尊さ、自然への感謝を思い出させてくれると同時に、学校での学びは過去の過ちを繰り返さないための大切な先人の知恵だったことを思い知らされました。

3.子供達の選択

この物語の終盤、未来に帰るための答えを見つけるも自分たちが訪れた未来は現代のはるか先ではなく生きてるうちに起きえる近未来の出来事だったと知った子供達が下した最後の決断には度肝を抜かれました。

このオチが一連の出来事による子供達の全てを物語っている様に思えてしまうぐらいに衝撃の結末でした。

子供達をこの結末に至らせたのは過去の人々の行いのツケであり、自分たちも未来にこの様な子供達を作ってしまうかもしれないと思うと恐ろしいです。

4.通勤時間で読める名作

最後に、漂流教室の驚いたところといえばこれらの物語で文庫の電子書籍化されてて6巻に集約されているという読みやすさです。実際自分は往復1時間半ぐらいの車内で3日かけて読み終わりました。

全体的に説明不足なところも目立ちますが見所の多い作品です。特に怪虫の話は巻を跨ぐだけにかなりの緊張感です。

漂流教室2巻302ページより

子供達の大冒険は全6巻(3630円)。

まだ読んだことはない人は是非!!


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